[借金返済 債務整理] 債務の不存在確認

原告
イミュ
株式会社


主文

1 原告は,被告に対し,355万円及び内金265万円に対する平成13年6月22日から,内金90万円に対する平成13年8月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の本訴請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じて,原告の負担とする。
4 この判決は,1,3項に限り,仮に執行することができる。

事実 及び 理由

第1 請求

1 本訴
原告は,被告に対し,平成12年10月31日付の300万円の借用書及び平成13年1月25日ころの日付の90万円の借用書の各債務を負担していないことを確認する。
2 反訴
主文と同旨

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告との間の2口の準消費貸借契約に基づく借金返済各債務の不存在確認を求める(本訴)のに対し,被告が,原告に対し,同各契約に基づく金員及び遅延損害金の支払いを求める(反訴)事案である。
1 争いのない事実等
被告は,平成9年6月ころ,2000万円の詐欺で逮捕され,懲役2年6か月の実刑判決を受け,刑に服した後,平成12年2月ころ出所した(乙4,被告本人)。
原告は,Aに勤務中,先物取引等に同社の取引先からの預り金約5億9740万円を使い込んだという詐欺及び業務上横領の罪で懲役刑の判決を受け,刑に服した後,平成12年3月23日に出所した(乙13,原告本人)。
原告と被告は,服役中の神戸拘置所で知り合い,出所後,原告がアルバイトをしていた三宮の書店で再会し,その後,何度か会うようになった。
2 争点
本件の争点は,原被告間に,被告の主張する金銭の貸与の事実があったかどうかである。
(1) 被告の主張
ア 被告の原告に対する合計300万円の貸付け
被告は,原告に対し,以下のとおりの金銭を,いずれも弁済期,利息,遅延損害金について定めないまま貸しつけた。
平成12年5月下旬ころ,150万円
平成12年6月上旬ころ,70万円
平成12年7月下旬ころ,80万円
イ 本件準消費貸借契約1
被告は,原告との間で,平成12年10月30日,上記各債務の合計300万円につき,弁済期,利息,遅延損害金について定めないまま消費貸借の目的とすることで合意した(以下「本件準消費貸借契約1」という)。
ウ 35万円の弁済
上記準消費貸借契約上の債務については,現在までに35万円の弁済がなされた。
エ 被告の原告に対する90万円の貸付け
被告は,原告に対し,平成12年9月1日ころ,90万円を,弁済期,利息,遅延損害金について定めないまま貸しつけた。
オ 本件準消費貸借契約2
被告は,原告との間で,平成13年1月18日,上記90万円の債務につき,弁済期を平成13年7月末日とし,利息及び遅延損害金については定めないまま,消費貸借の目的とすることで合意した(以下「本件準消費貸借契約2」という)。
カ 被告の原告に対する催告
被告は,原告に対し,平成13年6月21日到達の反訴状をもって,本件準消費貸借契約1の債務を弁済するよう催告した。
キ よって下記
よって,被告は原告に対し,本件準消費貸借契約1に基づき,265万円及びこれに対する反訴状送達日の翌日である平成13年6月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,本件準消費貸借契約2に基づき,90万円及びこれに対する弁済期の翌日である平成13年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払いを求める。
(2) 原告の主張
被告の主張を否認する。
本件準消費貸借契約1,2の各借用書は,原告が被告から,暴力団B会の威力を示されて脅し取られたものであって,実体を欠く無効の書面である。
よって,原告は,被告との間の,本件準消費貸借契約1,2に基づく各債務が存在しないことの確認を求める。

第3 理由

1 被告と原告の間の貸借に関する双方の供述は,以下のとおり,真っ向から対立するものであって,どちらかが嘘をついているとしか考えられないものである。
(1) 被告の供述(乙4,5,被告本人)
原告は,服役中,横領の原因となった先物取引に関連して,4000万円以上の損失補償を請求することができると言っていた。
出所後,原告と再会し,その後,何度か会ううちに,原告から借金を頼まれるようになり,数万円ずつ,数回にわたって融資した。
この貸金については,後日,返済を受けた。
その後,原告から,先物取引で会社に穴をあけた関係で,300万円を支払わなければならない,先物取引の会社から損失補償を受けて返済するので貸してほしいと頼まれ,平成12年5月末ころ,弟が保険契約を担保に借りてくれた100万円(乙14の1・2)など合計170万円の中から150万円を融資した。
原告に対し,損失補償の件に関して何か証拠があるなら見せてほしいというと,原告の横領事件の刑事記録の一部のコピー(乙10ないし13)を渡された。
原告から,どうしても金がいると追加の融資を頼まれたため,平成12年6月上旬ころ,いとこのCに頼んでサラ金から借りてもらった70万円(乙7,8)を貸し,また,同年7月末ころ,友人のDから借りた80万円(乙6)を貸した。
以上の合計300万円について,原告は,平成12年9月には返すと言っていたが,結局,返してもらえなかったため,同年10月30日,原告との間で本件準消費貸借契約1を締結して借用書(乙1)を書いてもらい,翌々日,印鑑証明書(乙3の1)の交付を受けた。
その後,平成12年内に上記300万円のうち35万円を少しずつ返してもらった。
原告から,「交際している女性の以前の交際相手がヤクザの息子で,100万円を払うように言われた。
仮釈放中で事件になるのは嫌だから金を払って解決したいが,頼めるのは被告だけだ」と言われて同情し,以前の職場の同僚のEに頼んでサラ金から借金してもらった78万円(乙15の1・2,16)と自分の12万円を足した90万円を平成12年9月1日に原告に融資した。
本件準消費貸借契約1の300万円について支払いが遅れていたため,上記90万円の貸金についても借用書を作成しようと考え,平成13年1月18日,原告との間で本件準消費貸借契約2を締結して借用書(乙2)を書いてもらい,後日,印鑑証明書(乙3の2)の交付を受けた。
平成13年2月になると,原告は逃げ回るようになった。
そこで,原告に対し,原告の親に話をしに行くと予告して,原告の家に出向いたが誰もおらず,原告の携帯電話に電話をすると,原告が警察にいるというので,何があったのかと心配して警察署に出向くと,警察官から,君は暴力団B会の関係者かなどと聞かれ,原告が暴力団B会に無理矢理借用書を書かされたと言っている旨伝えられた。
そこで,警察に対し,貸付けの経緯及び暴力団とは全く無関係である旨を説明すると,警察は自分のいうことが正しいと信じてくれた。
そのうち,原告から,弁護士に全て任せたという連絡が入り,本訴事件が提訴された。
(2) 原告の供述(甲2の1,甲3,8,原告本人)
原告は,服役中に,被告に対し,先物取引の会社であるFに対して損失を補償してもらわなければいけないという趣旨の話をしたことがあった。
出所後,三宮の書店でアルバイトをしていた原告の元を被告がたびたび訪れ,小遣い銭に困ったら少しの金なら貸してやると言ってきたので,被告から以下のとおり合計21万円を借り,いずれも借入月の25日に返済を終えた。
平成12年5月初旬ころに3万円
平成12年6月初旬ころに5万円
平成12年9月1日に6万円
平成12年10月24日に7万円
平成12年6,7月ころ,被告が原告に対し,Fの件の書類を見せてくれ,うちの弁護士に頼んでやるなどと,再三電話をしてきた。
原告が断ると,上記平成12年5月及び6月の各借金が詐欺に当たるなどと詰め寄ってきたので,原告はやむなく過去の事件記録(乙10ないし13)を被告に交付した。
その後,被告は原告に対し,平成12年10月30日,「Fの件で暴力団のB会に動いてもらっており,謝礼をしなければならない。
わしの顔で300万で話をつけてやる。300万円の借用書を書いておけ」などと言って,本件準消費貸借契約1の借用書と印鑑証明書を脅し取った。
また,被告は,原告に対し,平成13年1月18日,「この件で自分がいろんな人に頭を下げたりぼろくそに言われたりしているのに一銭の儲けもない。半年先で90万円の報酬を支払う旨の借用書を書け」などと言って,本件準消費貸借契約2の借用書と印鑑証明書を脅し取った。さらに,被告は,本件準消費貸借契約1の借用書を暴力団に売るなどと言って,原告を脅迫し,同契約の金利の名目で以下の金銭を脅し取った。
平成12年11月25日に9万円
同年12月に18万円
平成13年1月31日に10万円
平成13年2月,原告が警察に相談に行くと,民事事件の要素が大きいと言われた。警察が,夜遅くに家に行ったり,電話をしたりするのはやめておけというくらいの話なら被告にしてやるので,被告をここに呼ぶようにと言ってくれたので,原告は被告に携帯電話で連絡をして呼び出した。
やってきた被告は警察に対し,「300万と90万を彼に貸した。借用書もある」という発言を繰り返し,原告は「金は一切受け取っていない」と反論して,押し問答となった。
警察からは,これではお互いによく話をするしかないなと言われた。
その後も,被告は,詐欺事件として被害届を出そうと考えているとか,お前の行動は全部知っているなどと言って原告を脅したり,原告のアルバイト先に暴力団員風の男2名を連れてくるなどした。
2 そこで,どちらの供述が信用できるかを検討する。
まず,本件準消費貸借契約1,2についてそれぞれ契約書(乙1,2)が作成され,原告が印鑑証明書(乙3の1・2)まで交付していることに争いはないところ,このこと自体が,被告の供述を裏付けるものということができる。
また,被告の供述する貸金の出所の大半について,上記被告の供述の中で引用したとおりの裏付証拠の存在が認められる。
このことは,被告の原告に対する貸金の事実を裏付ける有力な証拠というべきである。
さらに,原告の供述するところによれば,被告の行為は犯罪に該当することが明らかであるのに,原被告の上記各供述によれば,警察は,原被告に対して話合いでの解決を勧めただけで,結局,被告に対する捜査に着手しなかったと認められる。
このことは,原告の供述の信用性を減殺する事実ということができる。
この点について,原告は,被告を携帯電話で警察に呼び出した際に,被告から「警察には何も言うな,組の名前も出すな」などと言われたため,刑事の前でずっと黙っていたからである旨弁解するが,原告が助けを求めて警察に行ったという経緯に照らすと不自然な弁解であって信用できない。
そもそも,被告が,原告の供述するような脅迫に及んでおり,暴力団とも関係があるとするならば,原告に呼び出されたからといって,警察署まで出向いて事情を説明するとは考え難いことである。
以上検討したところによれば,被告の供述の方が信用性が高いというべきである。
そうすると,本件準消費貸借契約1,2の各契約書(乙1,2)及び被告の上記供述により,原被告が,本件準消費貸借契約1,2を締結した事実を認めることができる。
3 結論
以上の次第で,被告の反訴請求はいずれも理由があるのでこれを認容し,原告の本訴請求をいずれも棄却する。

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